M&A(合併・買収)は、企業の成長戦略や事業承継の手段として、近年ますます多様な業界で活発に行われています。特に以下の業界でM&Aが盛んに行われる傾向にあります。
1. IT・ソフトウェア業界
- M&Aの背景:
- 技術やエンジニアの確保: 急速に進化する技術トレンドに対応するため、特定の技術や優秀なエンジニアを持つ企業を買収することで、自社の競争力を強化します。
- 新規サービスの開発・強化: 新しいデジタルサービスやソリューションを迅速に市場投入するため、関連技術やノウハウを持つ企業を取り込みます。
- 市場拡大・グローバル展開: 国内市場だけでなく、海外市場への進出や事業規模の拡大を目的にM&Aが行われます。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)推進: 異業種からのIT企業買収が増えており、自社のDX化を加速させる目的があります。
- 例: SaaS(Software as a Service)企業、Webサービス開発企業、AI・IoT関連企業など
2. 医療・介護業界
- M&Aの背景:
- 少子高齢化と医療・介護需要の増加: 安定した需要が見込まれる一方で、人材不足が深刻です。
- 後継者不足: 特に中小規模の医療法人や介護施設で後継者が見つからず、M&Aによる事業承継が増加しています。
- 事業効率化・規模拡大: 大手チェーンが中小規模の施設や薬局を買収することで、運営効率を高め、市場シェアを拡大します。
- 地域医療の維持: 地域に根差した医療・介護サービスを維持するため、M&Aが選択肢となることがあります。
- 例: 調剤薬局、病院・クリニック、介護施設(デイサービス、訪問介護など)
3. 建設業界
- M&Aの背景:
- 後継者不足・高齢化: 経営者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっています。
- 人材不足: 熟練の技術者や労働者の不足が慢性化しており、M&Aによって人材を確保する狙いがあります。
- 専門性の拡大: 専門性の高い技術を持つ企業を買収し、自社の事業領域を広げたり、提供できるサービスの種類を増やしたりします。
- 業界再編: 中小企業の統合により、競争力を強化し、大規模な案件に対応できる体制を構築します。
- 例: 総合建設業、設備工事業(電気工事、管工事など)、土木工事業
4. 運輸・物流業界
- M&Aの背景:
- 労働力不足・2024年問題: ドライバー不足や働き方改革による労働時間規制強化(2024年問題)への対応が喫緊の課題です。
- コスト削減・効率化: 拠点や輸送網の統合による効率化、共同配送によるコスト削減を目指します。
- M&Aによる事業承継: 後継者が見つからない中小の運送会社がM&Aを選択するケースが増えています。
- SCM(サプライチェーンマネジメント)の強化: 荷主企業が物流機能の内製化や強化のために物流会社を買収する動きもあります。
- 例: 陸運業、倉庫業、国際輸送業
5. 小売業・飲食業
- M&Aの背景:
- 競争激化・業界再編: EC(電子商取引)の台頭や消費者の多様なニーズに対応するため、業界内での再編が進んでいます。
- 店舗網の拡大: 短期間で店舗数を増やし、市場シェアを拡大するためにM&Aが行われます。
- ブランド力の強化・多角化: 新しいブランドを取り入れたり、既存の事業とシナジーを生むような事業を買収したりします。
- 事業承継: 後継者不在の個人経営や中小規模の店舗が、大手企業の傘下に入ることで事業を継続するケースも多いです。
- 例: ドラッグストア、スーパーマーケット、専門店、飲食店チェーン
これらの業界では、それぞれの背景にある課題や成長機会に対応するため、M&Aが重要な経営戦略として位置づけられています。